すべてはマーケティングコミュニケーションのためにーー継続力、思わぬご縁、ソーシャルメディアについて

すべてはマーケティングコミュニケーションのためにーー継続力、思わぬご縁、ソーシャルメディアについて

私が、このブログを書き始めて3年ちょっとたちました。連載開始の当初、これほど長きにわたって連載を担当し続けることになるとは、私自身は予想していませんでした。

「継続は力なり」とはよく知られている言葉ですが、いまそのことをあらためて実感しています。連載を続けていくなかで、さまざまに考えあるいは感じたことがあります。

この3年間を振り返ってみると、不思議なご縁やつながり、ソーシャルメディアのありがたさと難しさ、書評エッセイというスタイルの確立など、私自身にとって得たことが実に多くあります。そのことを、今回はみなさまにお伝えしようと思いますので、お付き合いを願えればとても嬉しく思います。

「書評エッセイ」という独自性の確立

執筆当時、書評を中心に考えていました。それというのも、次々と刊行されるさまざまなビジネス書についての書評はメディアに数多く溢れていますし、便利なビジネス書の要約サイトサービスもbookvinegerなどをはじめいくつかあります。それでも、あえて書評を手がける決意をしました。

選定する書は私の関心のアンテナにかかった本で、新刊紹介あるいは案内など、いわゆる一般的な書評スタイルでもありません。新刊・既刊を問いませんし、旬で話題の本やベストセラー本もほとんど取り上げることがありません。

ビジネス書にかぎらず、書評を書き始めたときからそれは変わっていません。しかもときには一般書店ですでに入手できなくなった著書も取り上げ、また自己啓発本は扱わないという方針があります。

つまり、本を選んで、その著書と著者から得た私なりの考えや感じたことあるいは気づきや示唆などを綴ることで、私の書いた書評を読んでくださるみなさまにも益することができればという視点なのです。そもそも読書とは、著者や著書との対話であると私が考えているからです。

そうしたことにも関わらず、私の書評を検索で見つけて読んでくださったあるメディア関係者から、「とても深い書評だ」という言葉をいただいたこともあり、その言葉だけで十分だとありがたく感じました。私が考え、追求してきた書評スタイルで書き続けてきたことは、けっして無駄や間違いではなかったのだと実感したありがたい感想です。

それを、私は勝手に「書評エッセイ」と称しています。良くいえば「書評とエッセイが交差するところ」に成立する書評ということになりますが、いわゆる日本で書評と言われている型(それは世界的にはガラパゴスなのですが)とはどうしても異なります。しかも分量もかなり多く、スキマ時間などに消費情報として気軽に読むコンテンツに相応しいとは決していえません。

誤解を恐れずにいえば、私の書評は他人の著書をダシにして己を語るという、実に自分勝手な書評なのだということになります。

この3年間、そうした自分勝手な考え方でありながら、多くのみなさまに読んでいただけたことを大変にありがたく、また嬉しく思っています。こうした自分独自の考え方と視点で続けてきたことで、書評エッセイというスタイルを私なりに構築でき、読んでくださるみなさまにも益することがなによりの励みになっています。

書評エッセイを通じた著者たちとの出会い

本とハートの置物

私が書評本として取り上げる本は、マーケティングや経営戦略などほとんどが邦訳書です。経営戦略やマーケティング戦略というとどうしても、欧米の著者による著書のほうが私自身は得ることが多く、それはこれまでもそうでしたがこれからも変わらないだろうと思います。

したがって、日本人が書いたものを選ぶことはどうしても少なくなります。そうした事情にもかかわらず、日本人の著書を取り上げたことで2019年は思わぬ嬉しい出来事が2つありました。

1つは昨年5月、カナダ在住の作家である一田和樹さんとのご縁です。3月に掲載された『フェイクニュース〜新しい戦略戦争兵器』をツイッター上で見つけてくださり、さらにはシェアまでしてくださいました。しかも、2ヶ月後の5月、一時帰国のおりには直接お目にかかって御礼を申し上げると同時に、意見や情報交換することが叶いました。その半年後の11月、一時帰国のさいにも再会して一田さんのお仲間も交えた楽しい時間を過ごすこともできました。

その一田さんとのご縁と経緯については、私の書評エッセイスト宣言たる「独自性はどうやって発揮できるのかーーPR・マーケティングにおけるスキルの磨き方から考えるべきこと」という記事に書きましたので、ご興味のあるかたはあわせてご笑覧願えれば幸甚に存じます。

2つは、ニューヨーク在住の菅谷明子さんです。およそ1年も前に書いた『メディア・リテラシー〜世界の現場から』を、同じくツイッター上で発見してくださり、さらには一田さんとお目にかかってから1ヶ月後の6月、一時帰国されていることを知りました。

偶然にも、『マガジン航』主催で私の友人の仲俣暁生さんと菅谷さんとが友人同士という奇縁をそのときに初めて知り、仲俣さんのご厚情でお二人の対談イベントの場に参加することができました。

直接お目にかかって、私のブログを取り上げてくださった御礼を申し上げたさいに印象的だったのは、20年も前の本を現在のコンテキストに引き入れて読み込んでくださる人がいるのが嬉しく、新版や改訂版をすすめられているのだが出さなくても良いのだと思いました、というような感想を頂戴したことです。

菅谷さんのそうした言葉は私にとっても大変に嬉しく、自分なりの独自スタイルによる書評を発揮することの重要性、その意義と価値をあらためて認識することができました。

旬であることや話題性に頼った著書とはちがい、すぐれた本には共通するものがあります。著書そのものは書かれた時点に固定されたままなのですが、読む側はつねに思考を深化させ知見を成熟化させていきます。そうした読み手の流動性が著書と出会い、その現在性に引き寄せる力とそれに問いかける内容とを内包していることです。そうした著書こそ、読み継がれる本だろうと私は判断しています。人類が生きているかぎり読まれ続けるような本、だからこそ古典といわれるのだと。

ジョン・ロックの至言、“読書は単に知識の材料を提供するだけである。それを自分のものにするのは思索の力である。”を、これほど実感したことはありません。

本を単なる情報源ではなく、著者との対話あるいはそのプロセスとして追体験するという視点に立てば、菅谷さんのご著書は紛うことなくメディアリテラシーについての古典です。それは、同書を読んで同じような感想をくださった一田さんの言葉がそれを証明しています。

私の書評エッセイは分量が多いうえに自分の視点や言葉で語るので、ほかの一般的なメディアでは歓迎されないでしょうし、世間からのコンセンサスを得ることがないことも十分に理解しています。それでも一田さんや菅谷さんお言葉から、認知度にかかわらずに自己のスタイルを貫けばよいのだと勇気づけられました。

また記事を書くときに常に留意しているのは、バズらせようとかタイトルで釣ろうということは一切考えないことです。今日では誰でもコンテンツ制作者です。たとえ少数であっても読んでくださるみなさまに、この記事を読んで良かったあるいは気づきやヒントなどにつながればという気持ちで常に書いています。

昨年に書評でも紹介したアン・ハンドリー著『コンテンツ・マーケティング64の法則:売りにつながるオンライン記事の書き方』を読んだとき、バズらせるあるいはタイトルで釣ることを強く戒めていることで、そうした感をより深めました。

何年たってもソーシャルメディアは難しい

ハッシュタグ

現在では、ソーシャルメディアは日常的な情報発信やコミュニケーションツールとして老若男女のだれでも利用しています。

私自身、2005年のSNS初体験となったmixi、2008年に開始したブログ、Facebookとtwitterなどを含め、多くのソーシャルメディアを利用してきました。それでも、依然としてソーシャルメディアは難しいと感じています。

例えば、書いた時点ではもっとも読まれることが少ない記事だろうと思っていた「新しい酒は新しい革袋にーー未来の職種は新しい言葉(役職名)で作られる」は、私の予想を超えて多くの人たちにもっとも読まれている記事の1つです。それは、人気記事のランキング(7日間の人気記事)に今でもランクインすることからもわかります。

その反対に、読んで欲しいと思って書いた【書評】『私たちはどこまで資本主義に従うのかー市場経済には「第3の柱」が必要である』(ヘンリー・ミンツバーグ:ダイヤモンド社)、「「フィランソロキャピタリズム」ーー21世紀的な社会貢献または企業形態について考える」は、実際にはそれほど読まれていません。

また、個人的な関心から書いた「PR会社 vs 広告代理店 vs コンサルティングファームという“課題”について考える」も、はたしてどれほどの人が読んでくれるのだろうかと疑問に思っていたのですが、これまでに2000回以上読まれ、1記事のなかではもっとも閲覧された記事となりました。

さらに、直接的にはマーケティングコミュニケーションやPRとはまったく関係がなく、掲載はもとよりどれほどの人が関心あるのかわからないほど掲載前は不安で、まったくの個人的な興味から書いた「ソーシャルメディアやコミュニティ運用者に最適なBiscuit(ビスケット)ーー「ブラウザの歴史が、また1ページ……。」は、なんとか3桁(100以上)の閲覧者がいたことに安堵したりもしました。

私自身はブログを始めて12年経つのですが、それでもSNSを含めたソーシャルメディアは、やはりいまでも難しいものだと感じています。自分が渾身の思い書き上げた記事にもかかわらずほとんど読まれず、何気なく書いた記事に信じられないような閲覧数があることもしばしばです。

たとえば、人はたわいものない一言がそれまでの人間関係を損ねてしまうことがあります。ソーシャルメディアにおいてもそうした実社会のそれと同様、本人の何気ない投稿(発言)が炎上することにもなります。

つまり、はじめから意図して炎上することを計算している(炎上マーケティングなど)のでない限り、ソーシャルメディア上で話題になるのか炎上してしまうのかは紙一重なのです。そうした状況に接するにつれ、ソーシャルメディアとの付き合い方は本当に難しいものだと身にしみます。

多様性あるお付き合い、ご縁の大切さ

ミーティングの記念撮影

同じ業種や業界の人たちとの集まるイベント(セミナーやカンファレンスなど)に参加することは、同じ仕事にたずさわっている人たちならではの悩みや課題を共有して意見や情報交換することができますし、また仕事やスキルについて情報や知識をアップデートすることで見識を広げることに役立ちます。

しかし、さらに重要なことは、その人自身の仕事とは直接関係のない異業種の人たちとの出会いやつながりです。多様性に触れる貴重な機会で、普段の仕事上ではなかなか会うこともできない思いもかけない人たちとのご縁を得ることが貴重なことは、私自身が身をもって経験してきました。

多様性=ダイバシティは、イノベーションと並んで今日はこの言葉を耳にしない日はないほどで、だれでもその重要性は認識しています。しかし、それを実践するあるいは実行できるのは稀なことです。

昨年末、そうしたご縁の不思議さとありがたさを実感しました。それは思わぬイベント「マルチメディア30周年記念」に参加したときのことです。

同イベントのご案内をいただいた江藤さんとは、2018年に開設された青山学院大学大学院の「シンギュラリティ研究所」のイベントでご縁をいただきました。江藤さんは、ベンチャーキャピタリストとして米国ワシントン州シアトルと日本を往復しながら仕事をしています。

そこでお目にかかって以降もメッセージのやりとりはありましたが、残念ながら直接お会いする機会を逸していました。昨年末、そのイベントで約1年半ぶりに会うことが叶いました。

しかも、テーマである30年前の「マルチメディアイベント」に江藤さん自身が関わっていたということを、記念イベントに参加して初めて知って驚きました。そうした不思議なご縁とつながりに、セレンディピティを感じます。

好奇心、独自性、洞察力ーーすべてはマーケティングコミュニケーションのために

私自身、大切にしている3つのことがあります。それは好奇心、独自性、洞察力で、公私を問わずに自身に課していることです。この3つが、不思議なご縁や多様性ある人たちとのつながりやめぐり逢いだけではなく、自己のスキルやキャリアアップなどにもつながる心構えだと、私自身の経験から得たことだからです。

この3つ(好奇心、独自性、洞察力)とも口にすることは簡単なのですが、どれも堅持し実行していくためには意志と努力も要求されます。

また記事を書く場合には、それが書評エッセイかマーケティングエッセイかにかかわらず、どのような題材であろうとも現在性やマーケティング視点に引き入れて読む、あるいは考えて記事を書くということを心がけています。

ほかのライターの方々の記事を拝見し、私の書いている記事はPRに直接関係がないこともあるし、私自身が仕事で経験してきたことや得てきたことから述べているにもかかわらず、読んだことで明日からすぐに業務に即役立つことがないかもしれないと感じることもあります。

それでも、この3年間の出来事に思いをめぐらし、これまで掲載してきた私の記事がお役に立ったか否か、それはみなさまのご判断に委ねるしかありません。しかし、これまでの記事を読んでくださった方々には、こころより御礼と感謝を申し上げます。

この3年間、連載を継続してきたことで、自分なりのコンテンツ志向性への確信、さらには記事を通じて得たご縁やつながりを大切にしながら、これからもさらに多くの人たちに読んでいただける記事を提供できるよう、書評でもその他の記事を書くときでも、「すべてはマーケティングコミュニケーションのために」という意識で、一層の自己研鑽に励みたいと決意を新たにしました。

この記事の著者

この記事の監修者

神村 優介

神村 優介

シェイプウィン株式会社 代表取締役。PR・SNS・SEO・GEO(Generative Engine Optimization/生成エンジン最適化)を統合したコミュニケーション戦略を専門とするPRストラテジスト。 徳山工業高等専門学校 情報電子工学科を卒業後、株式会社セガトイズにて家庭用プラネタリウム「ホームスターアクア」(年間出荷15万個)をプロデュース。2011年、24歳でシェイプウィン株式会社を設立。 創業以来、国内スタートアップから上場企業、日本市場に参入する外資系企業まで300社以上の広報・マーケティングを支援。Chatwork、スマレジをはじめとする国内テック企業のほか、サイバーセキュリティのClaroty、メッセージングSDKのSendbirdなど海外ユニコーン企業のPR戦略を担当。2020年にカナダ・バンクーバーへ北米拠点を開設し、日系企業の海外広報とクロスボーダーPRを手がける。 2020年からPRとSEOの統合を提唱。現在は生成AI検索での引用獲得を目的としたGEOと従来型PRを組み合わせたクロスチャネル戦略を、シェイプウィンの中核サービスとして展開している。 東京都の海外進出支援プログラム「X-HUB TOKYO」マーケティング・メンター(2021年〜)。米国のカンファレンス「PTC'24」パネル登壇、JAXAベンチャー・天地人主催セミナー登壇など。CNET Japan、ASCII.jp、EE Timesへの寄稿、Fortune(米国)への掲載実績を持つ。